特異遺伝因子保持生物ー通称”怪(あやかし)”
その血を受け継ぐ少女、片倉優樹はその力と銀髪から「白髪頭」と呼ばれ恐れられていた。
ある日、特殊部隊『EAT』へ協力中、優樹は1人の人間の青年と出会う。
青年の名は山崎太一朗。
『EAT』の一員である太一朗の直情的な言動に最初は不安感を覚える優樹であったが、徐々に彼の飾らない性格に好意を抱くようになる。
一方片倉優樹を付けねらう甲種”怪”が1人。
その人物、3年前殺人鬼として日本を騒がせた高橋幸児と優樹とは浅からぬ因縁があった…。
第6回電撃ゲーム小説大賞<金賞>受賞のホラーファンタジー、登場
ネタバレなし。
読み終えました。
なんだか不思議な感じです。
ダブルブリッドを読み始めたのは、もう今から何年前だろう……。
高校生だった当時に教室で「キノの旅」を読んでて、
ふくだべ君そういうの読むんだ! これ面白いから貸したげるよ!
とクラスメイトに貸してもらったダブルブリッド1巻。
高校時代には碌な思い出が無いのですが、このダブルブリッドとの出会いだけは本当に良かったなぁと思ってます。
受け取った1巻を見た一番最初の印象は「絵が……w」
1ページ目をパラッと見た印象は「なんか堅そうな感じ……」でした。
殴ってやりたいですね。
貸してくれたのに読まないのも悪いと思ってとりあえず読み始めました。
気づいたら読み終わってました。
夢中で読んでた。
もうね、なんだろう、1巻を読んだ時の切なさというか嬉しさというか形容しがたい感情。
本当にいい作品と出会えたなぁと感じました。
1巻で既に綺麗に完結してるじゃんとは思ったものの、まだ続きがあるというのを聞いて、「まじか!」となって2巻3巻と借りてよみました。
そのうち、これはちゃんと自分で買ってよみたい、という気持ちが強くなり、借りずに買って読むことに。
今思えば、借りて共通の話題で盛り上がってた方が良かったような気もしますが、とにかくそれ以降、もう1巻から全部買っていきました。
本当に夢中で読みました。
たぶん人生で一番小説を読むのにハマってたのはこの頃なんじゃないかと思います。
冗談抜きで、ずーっと1日1冊のペースで読んでました。
2巻3巻あたりは、まぁまだめでたしめでたしと言える感じだったんだけど……。
で6巻ですよ。
その前から不穏な雰囲気はあったものの、ここで本当に衝撃を受けた。
小説読んでて「うわぁ……」って思わず声を出したのは後にも先にもこの時くらい。
小説って挿絵はあるものの、視覚情報というよりは自分の頭の中でそれを思い描いていくじゃないですか。
それが本当に、漫画とは違う面白さがあるなぁと痛感しました。
例えばアニメや漫画で、作中では可愛いとされている女の子が登場したとして、消費者的には「そんなに可愛くなくね?」ってこともまぁあるわけじゃないですか。
でも小説で「その可愛らしい少女は」とか書いてあったら、読者は自分の頭の中にある可愛い女の子をイメージするわけですよ。
なんか話が逸れてる気もするけど、とにかく文字情報を入れていくという作業って、受け手の受け取り方次第でいくらでも壮大になるというか。
その場面を想像しながら読んでいくから、どんどんその世界に引き込まれるんでしょうね。
映画でもアニメでも小説でも、個人的に「こういう作品は好きだなぁ」って基準があります。
それを観てて(読んでて)、それがフィクションであることを忘れてしまう作品です。
結局エンタメ作品の世界って全部虚構で、実際には存在しないわけで。
でもそれを忘れてしまうくらい夢中になってしまう作品が好きです。
ダブルブリッドの場合はまさにそれ。
血なまぐさい描写も多いんだけど、まるで本当にそういうことが起きているのかと感じてしまうくらいに、本当にのめり込んで読んでました。
その当時9巻まで発売されていて、なかなか10巻が出ない!という状況でした。
自分も、9巻発売の数年後に読み始めたとはいえ、2008年に10巻が出るまでには相当待ちました。
というかちゃんと10巻が出るのか?と不安になったり。
片倉優樹と山崎太一朗の物語に決着がつくまでは死ねん!
とか思いつつも、10巻が出る頃には結構内容忘れてたり。
そりゃーだって高校時代に読み始めて、10巻発売したのはGRJで配信バリバリしてた大学3年の時ですもの。
とりあえず10巻は発売してすぐ購入したものの、9巻までをもっかい読み返して、内容思い出してから10巻を読もう、と決意。
買った時のビニール袋に入れたまま、本棚に置いてました。
漫画と違ってなかなか読み返すのも大変で、時間が取れないなーとか思ってるうちに13年が経過しました。
13年て。
正確には12年半くらいだけど。
よくもこんなに長い間読まずにほったらかしにしてたもんだ……。
その間、正直あまり知名度の高い作品ではないとはいえ、致命的なネタバレも見なかったのは奇跡かなと思います。
電子書籍のサイトのレビューでうっかり10巻の終わり方がハッピーエンドだのバッドエンドだのみたいな書き込みをチラ見してしまった時は本当に後悔しましたが、細かい展開に関することではないのでまぁセーフ!
大学進学する前に読み始めて、卒業、就職して……。
退職して時間もあるうちに読んでおこうと、夏くらいからちまちま読み返してました。
そして10巻を読みました。
13年という長い間、なかなか読むことができなかったのは、
片倉優樹と山崎太一朗という二人の結末を知るのが怖かったからなのかもしれません。
シュレディンガーの猫じゃないけど、読めば結末は確定しちゃうから。
読み終えた今、なんだか本当に不思議な気持ちです。
結末を知ることができて良かったという安堵と、
もうこの先ダブルブリッドの物語を読むことができないんだという寂しさと。
さすがに読み始めてから読み終わるまでこんなに時間をかけた人は他にいないでしょう。
若い頃に読んでた時にはそこまで深く考えていなかったかもしれないけど、
改めて読み返すと、生き物の生と死って一体なんなんだろうとか考えちゃいます。
「君の生と死は、君だけのものだ」
「死ぬまで生きる」
なんかそういうセリフにグッときちゃう年になったなぁ。
短編集と、10巻のその後を描いたDrop Bloodも今日読みました。
片倉優樹という生き物にさらにさらに感情移入してしまうような内容でした。
改めて、読み終わってしまったということの不思議さを噛み締めております。
彼ら彼女らは実在しないけど、なんだか本当にいたような、いるような、そんな気持ちです。