KAGEROU 齋藤 智裕 ポプラ社 2010-12-15 by G-Tools |
『KAGEROU』――儚く不確かなもの。
廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。
「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。
そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。
命の十字路で二人は、ある契約を交わす。
肉体と魂を分かつものとは何か? 人を人たらしめているものは何か?
深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。
そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、
かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。
水嶋ヒロの処女作、
哀切かつ峻烈な「命」の物語。
別に全然読む気は無かったんだけど、親父が買ってきて
読み終わった後に貸してもらってというか借りさせられて読みました。
ちらっと見た感じアマゾンではかなり酷評されてる感じですが、
内容も知らずにどういう言えないなーと思ってちゃんと読んだ。
最初から特に良い印象も無かったから、つまんなかったら叩いてやるかくらいの気持ちで読み始めたんだけど、
読み終わってみると、言うほど酷い小説ではなかったです。普通に読めた。
僕自身あんまり小説読んでるとも言えないから立派な批評なんかできないけど、思った感想書いていきます。
なんか改めて上のあらすじ見てみると、内容とだいぶ違うような気がする。
無理にかっこよく見せようとして書いてる感じ。
水嶋ヒロって言っちゃってるし。齋藤智裕でしょうが。
小説自体は別に悪くなかった。
別人が書いて水嶋ヒロが送ったんじゃねみたいなことも言われたりしてるけど、
たぶん本人が頑張って書いたんだろうなぁっていうのは感じた。
ただ第5回ポプラ社小説大賞受賞ってのはかなり違和感。
この賞っていうのがどれだけのものなのか全然分かってないんですが、
賞金2000万の価値は無いと思う。
映画化も決まってるみたいだけど、いくらなんでも早すぎて出来レース感がプンプン。
水嶋ヒロさんのことをまずよく知らないんだけど、たぶん本人は頑張って書いたと思うんだ…。
まわりが変に持ち上げすぎ&誇大広告すぎって感じがする。
その辺に本人がどれくらい関わってるかは推測するしかないけど。
以下ネタバレ含む内容の感想。
全ド協とか超高度な医療技術とか、その辺はフィクションだから別にいいと思う。
「こんなのありえねぇよ!」って突っ込むようなところじゃない。
読んでて思ったのは、なんかあんまり人物が見えてこないなーっていうこと。
主人公のヤスオは40歳のおっさんだけど、その年齢も、読んでてあんまり意識しなかった。
なんか20代後半くらいのお兄さんみたいな感じ。喋り方とか。
なんで40歳にしたんだろう。
40歳の割には、40年間の人生の重みがあんまり感じられなかった。
いやそういう描写もあったんだけど、言動とかがやけに若い感じ。
あんまり感情移入もできなかった。
20代でも良かったような気がするなぁ。
それでキョウヤを男じゃなくて女にすれば、普通にラノベでありそうな感じ。
最後の最後まで、「キョウヤはヤスオを騙してとんでもないこと企んでるんじゃねーか」って思ってたけど、
案外何も無くて「あー、そうなのか」っていう。
キョウヤはキョウヤでよく分かんないんだよなぁ。
途中から出てきたアカネも、あんまり年齢が見えてこなかった。
20歳っていう描写も確かにあるんだけど、中学生くらいに思えてしまって。
なんか全体的に低年齢化してるなwwwww
最後の方で、ヤスオがアカネにわざと突き放すような言い方してたけど、
あの辺はちょっとよく分かんなかった。
そんなこと言う必要あるか?って。
ヤスオはヤスオなりに覚悟を持ってやったと思うんだけど、その覚悟があんまり伝わってこなかった。
会話文が続くと、どっちが喋ってるのか分からなくなることが稀によくある。
冷静に読み返せば分かるんだけど、なんか分かりづらい。
男同士の会話ならまだしも、男女の会話でも「ん? どっちだ?」っていうような場面もあったりして。
自分の国語能力が低いと言われたら強く反論できないですけどー。
最後の最後、ヤスオの脳をキョウヤに移植したと思うんだけど、
なんかちょっとよく分からんかった。どういうこと?って。
脳移植は今までやってなかったみたいだけど、キョウヤの目が覚めた時でも他の医者の反応がそんなに大袈裟じゃなかったし。
それならまだ心臓移植して、ドナーの記憶が……っていう方が分かる気がする。
実際そんな話も聞いたことあるし。
最後のREPORTのところで、脳をキョウヤに移植した、みたいな記述があればまだ「ああー」ってなると思うんだけど。
気持ちいいモヤモヤ感とよく分かんないモヤモヤ感とあるけど、これは後者かなー。
ここは読む人によって意見分かれそうだけど。
全ド協みたいな組織は、実際にあったら凄いだろうなーみたいな想像膨らみますね。
どうせ死ぬなら楽に死ねて臓器も売れる方が、本人も患者も助かるだろうし、みたいな。
実際は人権とか色んな問題で難しい、というか議論することすら許されないみたいな雰囲気あるけど。
色々考えることができる話は面白いと思う。
自分は気付かなかったんだけど、親父に本返した時に言われて初めて知った。
29ページと30ページだけ、頁数のところが手書きだっていう。
これは面白いなーって思ったwwwww読んだ人は意味分かるけどwwwwwww
まぁ意味というか別に手書きで数字書いてあるから何なんだって話だけど、
さりげなーく仕込んでるあたりが面白い。
でも本文最後のページでの誤植は何なんだwwwwwww
そこで間違えるなよwwwwww最後の大事なとこだろwwwwwwwwwww
「を外してヤスオに」が「を外しキョウヤに」って上に紙貼って修正されてました。
思わず裏から透かして見たわ。
修正作業も大変だったろうなぁ。
出来れば、あとがきとかも読みたかった。
どういうこと考えながら書いてたのかなーとか知りたかったし。
2ちゃんやアマゾンでボロクソに言われたりしてるけど、そこまで酷い小説じゃなかったです。
でも大賞2000万の価値は僕には見出せませんでした。
今回は親父が買ってきたのをタダで読めたから良かったけど、
1470円出してまで買おうとは思わない内容。
500円くらいの文庫本でちょうどいいと思う。
っていうか見た目ほどのボリューム無いんですよねこの本…。
正確には覚えてないけど3時間弱くらいで余裕で読み切れた。
ごくごく普通の小説でした。
処女作だと思えばそんなに叩くほどのものでもない気がします。
ただ出版社、メディアは持ち上げすぎ。叩くべきはこっちだと思う。
楽に読めるので、なんとなーく小説読みたい気分だなーって人にオススメです。
少し経てばブックオフに並ぶはず。